自由意志は存在するのか。決定論・運命論に反論する側の研究を中心に、この問いを扱う論文を毎回 Crossref から集め直しています。
「どうせ全部決まっている」という主張が、実際の研究の場でどこまで支持されているのかを、論文の現物で確かめられるようにするのが目的です。
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この分野の議論は、4つの論点にほぼ集約されます。
1983年、Libetは「動かそう」と意識する0.35秒前に脳の準備電位が立ち上がることを示しました。決定は意識より先に脳が済ませている、と読まれ、自由意志否定論の代表的な根拠になりました。
ところが2012年以降、Schurger らはこの準備電位を「決定の開始信号」ではなく、閾値に向かう神経活動の自発的なゆらぎだと再解釈しました。ゆらぎがたまたま閾値に達したところで動くだけなら、準備電位は決定の証拠になりません。否定論の実験的な土台は、現在かなり揺らいでいます。
両立論は「ならない」と答えます。物理レベルで決まっていることと、行為者レベルで選んでいることは記述の層が違う、という立場です(List、Carroll、Ismael)。
非両立論は「なる」と答えますが、そこから決定論のほうが偽だと進む道もあります(Steward)。「決定論を認めたうえで自由を守る」のか「決定論を疑う」のかで、擁護側も割れています。
Fischer の半両立論は、自由意志の問題を棚上げして責任だけを先に確保しようとします。Vargas の修正主義は、素朴な自由意志概念は捨てつつ責任の実践は正当化できるとします。
懐疑側の Caruso は逆に、責任が無いなら刑罰も応報ではなく公衆衛生モデルに変えるべきだと主張します。この論点だけは、制度設計に直接効きます。
Brembs はショウジョウバエの行動が刺激から一意に決まらないことを示しました。Steward は動物の行為主体性そのものが決定論と衝突すると論じます。自由度の起源を人間より前に置くこの路線は、議論を「意識があるか」から切り離せる点で強力です。
この分野で最も有名な実験です。1983年にLibetがやったことを、そのままなぞれます。所要1分。
点が円を回ります。いつでもいいので、動かしたくなったら「動かす」を押してください。 押すタイミングは完全にあなたの自由です。
Libetはこの結果を「脳は、あなたが決めたと感じる約0.35秒前に、すでに動き出している」と読みました。決定は意識より先に脳が済ませている——自由意志否定論の最強の根拠とされてきた実験です。
ところが2012年、Schurger らがこの読み方を崩しました。準備電位は「決定の開始信号」ではなく、閾値に向かってさまよう神経活動の自発的なゆらぎだという再解釈です。
下のボタンで、その違いを見られます。
1本1本が別の試行です。どれもランダムに上下しているだけですが、閾値に触れた瞬間に手が動くので、押した時点から遡って平均すると——必ずなだらかな上昇カーブが現れます。
つまり準備電位は、決定の証拠ではなく、平均の取り方が作り出す形かもしれない。実験結果は同じでも、意味が反転します。
立場ごとに並べています。所属と立場の要約は手で書いたもの、論文リストは Crossref から自動で集めたものです。
著者を問わず、自由意志・準備電位・行為主体感・道徳的責任などの主題で新しく出た論文です。
追跡している研究者が書いた一般向けの本です。論文より先に、まずここから。
Free Agents(フリー・エージェント)
Kevin J. Mitchell / 2023
神経遺伝学者による擁護。生物が進化の中で獲得した行為主体性から自由意志を基礎づける。このサイトで追っている中では最も新しい本格的な擁護論。
Amazon 02How Physics Makes Us Free
Jenann Ismael / 2016
物理法則が決まっていることと、自分が選んでいることは矛盾しない。決定論を認めたうえで自由を確保する路線の代表格。
Amazon 03Why Free Will Is Real
Christian List / 2019
自由意志は物理レベルではなく行為主体レベルに現れる実在の性質だという創発からの擁護。
Amazon 04A Metaphysics for Freedom
Helen Steward / 2012
決定論と両立させるのではなく、決定論のほうが偽だと論じる。動物の行為主体性を足場にする独自の路線。
Amazon 05Determined(邦訳あり)
Robert M. Sapolsky / 2023
反対側の代表。自由意志は存在しないと全面的に主張する。擁護側の本だけ読むと足元が見えなくなるので、これも読むべき一冊。
Amazon 06Four Views on Free Will
Fischer / Kane / Pereboom / Vargas / 2007
両立論・リバタリアン・懐疑論・修正主義の4人が互いに反論し合う。この分野の見取り図としては最短距離。
AmazonAmazonへの検索リンクです。Amazonのアソシエイトとして、このサイトは適格販売により収入を得ています。 どの本を載せるかは紹介料とは無関係に選んでいます。
このサイトは擁護側を主に追うという編集方針を明示しています。中立な文献調査ではありません。何を集めるかを選んでいる時点で、それは主張です。
ただし懐疑側の代表的な論者も必ず載せます。片方だけ並べたものは資料ではなく宣伝になり、読んだ人の判断材料にならないからです。Sapolsky・Pereboom・Caruso の論文も同じ場所に置いてあります。
論文の収集は Crossref のメタデータに基づく機械的なものです。同姓同名や関連の薄い論文が混ざることがあります。各論文のリンク先で原典を確認してください。立場の要約は書き手の理解であり、本人の自己申告ではありません。